半落ち

主演/寺尾聡

日本映画万歳!冒頭にこの言葉を贈ります。個人的感想を申し上げると「砂の器」「半落ち」この2作が日本映画の双璧としてあげられるものとなりました。ぜひ、ご鑑賞をお薦めします。砂の器はハンセン病を、この映画は骨髄移植とアルツハイマーという病気をモチーフにして『人間』を見事に描いている。砂の器は日本を代表する社会派推理作家の松本清張の原作、片や今、注目の作家横山秀夫の原作。両作品とも原作が良く、それを見事に映像化したスタッフの大手柄だといえる。この映画は日本映画の良さを遺憾なく発揮した作品だ。砂の器は涙腺の弱い人はラスト45分は泣かずにはおれない、半落ちの方はジワーときて一気に流すなんともいえぬ涙だ。
この映画のテーマは「人間の正義」という、最も大切なことを取り上げているだけに、作品にするには最も難しい。それに挑戦した監督作品3作目の佐々部清監督に大きな拍手を贈りたい。「陽はまた昇る」でデビューして、この時も好評を博した。しっかりとしたドラマ仕立てができていたが、今回はテーマとしての素材が難しいだけに作品の良し悪しがハッキリとしてくる。それに挑んだ製作者・監督・スタッフに鑑賞者として感謝をしたい。脚本の見事さも見逃せない。次に、どのようなセリフが出てくるか、固唾をのんで観た映画もこれが初めてだ。前に乗り出すようにして「言葉」を受け止めた。「正義」を貫くための嘘は許されるかどうか?この映画は一つの方向性を示し、鑑賞者に問いかける。監督が脚本も手がけるとこのような作品が出来上がる。
 俳優陣が凄い。いい意味で贅沢三昧の演技陣を揃えた。寺尾聡は勿論ながら、脇役に現在の日本の映画界を支える俳優を揃えている。端役に主役クラスを配置したのも素晴らしい。思わず「日本映画もやるじゃない」「日本映画も捨てたもんじゃない」と頷いてしまった。日本映画のこれからの指針を見出した映画ともいえるだろう。
奈良岡朋子・井川比佐志・石橋蓮司。柴田恭平も彼自身にとって記念作になるはず。
戦後の演劇界にいぶし銀のような重厚な輝きを見せた宇野重吉。その息子である寺尾聡が重厚な演技を見せてこの作品を更に秀作に仕上げた。「雨あがる」「阿弥陀堂だより」と一作、一作確実に実力を付けていく演技を見ていると、「仕事は人を作る」と感心させられてしまう。寺尾聡には一流のプロ意識を感じた。メイキャップだけでなく、かなりの体重管理の上での役作りをしていた。セリフ抜きで表情としぐさで勝負する演技をしていた。日本映画の良識を観た感じで、なんだかとてもうれしくてこれからの日本映画に楽しみが持ててきた。
「仕事が人を作る」「人が仕事を作る」これは連関作用して好循環をもたらすように思える。塾の人材育成もそのような厳しさの中で人が育つ、育てなければ成らないと思う。日本映画の衰退も決してTVによる外的な要因だけでなく、人材の育成と業界の甘さがあったのではないだろうか。「甘さ」は育てる方も育つ方もダメにするというのは当たり前のことだ。頑張れ!映画界。がんばれ!日本の教育。

  
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